株式の所有割合をどのくらい確保するか?参考にしたい会社法の条文

いわゆるオーナー会社(同族会社)の場合、発行済株式のほとんどの割合あるいは全てを、オーナーである社長が保有しているかと思います。

しかし何らかの事情で、外部(取引先、銀行、従業員等々)から出資を受けて増資することもあれば、保有株式の一部を外部に譲渡することもありえます。

そのようなとき、オーナー社長自身が一定の権利を確保するために、どのぐらいの所有割合を確保しておくべきかの参考になる指標を、会社法の条文とともに挙げておきます。
(※下記のカッコ書きは、会社法の条文です)

 

発行済株式総数の2/3以上必要

会社法上、株主総会の特別決議が必要となる事項です。
決議には議決権の2/3以上の賛成を要するため、主に以下の事項をオーナー社長の意思通りに行えるようにするには、発行済株式総数の2/3以上を所有している必要があります。

・定款の変更(309条2項11号)

・資本金の減少(309条2項9号)

・合併、会社分割、株式交換、株式移転(309条2項12号)

・事業譲渡、事業譲受(309条2項11号)

・第三者に対する株式の有利発行(309条2項5号)

・累積投票により選任された取締役及び監査役の解任(309条2項7号)

・会社の解散(309条2項11号)

・特定の者からの自己株式の取得(309条2項2号)

 

発行済株式総数の1/2超必要

会社法上、株主総会の普通決議が必要となる事項です。
決議には議決権の過半数の賛成を要するため、主に以下の事項をオーナー社長の意思通りに行えるようにするには、発行済株式総数の1/2超を所有している必要があります。

・取締役及び監査役の選任、取締役の解任(329条、341条)

・取締役及び監査役の報酬額(退職慰労金を含む)の決定(361条、387条)

・計算書類の承認(438条2項)

・自己株式の取得(156条)

・その他、株主総会での普通決議(会計監査人の選任等)(309条1項)

 

発行済株式総数の1/3超必要

上記のような権利を確保しなくても、株主総会の特別決議で拒否できることにより会社経営に影響を及ぼせるようにするためには、発行済株式総数の1/3超を保有しておく必要があります。

反対に言いますと、外部者が発行済株式総数の1/3超を保有している状況では、株主総会の特別決議事項についてはオーナー社長の意向通りにできないリスクがあることになります。

 

発行済株式総数の10%以上必要

・会社解散請求権(833条)

 

発行済株式総数の3%以上必要

・株主総会招集請求権、同招集権(297条)

・取締役及び監査役の解任請求権(854条)

・帳簿及び書類の閲覧権(433条)

・業務財産調査のための検査役選任請求権(358条)

 

発行済株式総数の1%以上必要

・株主総会における検査役選任請求権(306条)

 

発行済株式総数の1%以上または300株以上必要

・株主総会の議題・議案提出権(303条)

 

外部者の所有は軽視できないので注意

オーナー社長(及び家族・親族分の合計)が発行済株式総数の2/3以上を保有していれば、上記事項については権利が確保されます。

しかしながら、2/3以上を保有しているからといって完全に安心かといえば、必ずしもそうとは言えません。
例えば、発行済株式総数の3%以上を保有している外部者との関係が悪化すれば、帳簿及び書類の閲覧権の行使を通して社内の機密情報が社外に流出されるおそれがあります。競合他社や、好ましくない外部者に譲渡されてしまうおそれもあります。

これらを防ぐためには、できるだけオーナー社長及びご家族・親族で100%に近い割合を保有しておくようにするとともに、定款において譲渡制限株式とする必要があるでしょう。