営業キャッシュ・フローの改善策を因数分解して考える

会社の財務体質改善において、キャッシュ・フローの改善は重要です。
不良資産の処分のような資産のスリム化には一定の限度があるうえに一時的であるのに対し、キャッシュ・フローの改善は限度があるとしても長期的な改善につながるからです。

特に営業キャッシュ・フローの改善は、会社の成長・存続に不可欠であり、利益を上げることと同じくらい重要な課題であると考えています。

 

では、営業キャッシュ・フローを改善するにはどうすればよいでしょうか?

ただ単に「営業キャッシュ・フローを改善するぞ!」と意気込んでも、何をどうすれば改善につながるのかは分かりにくいでしょう。
そこで、より具体的で分かりやすい行動計画を策定するために、営業キャッシュ・フローの改善策を因数分解のように細分化して、実行・実現可能なことから着手していく、というアプローチをしていくことが効果的かつ効率的と考えられます。

 

営業キャッシュ・フローとは

営業キャッシュ・フローは、売上や仕入、経費の支払などの会社の本業でどれだけのお金を稼いだかを表します。
損益計算書上の利益とは違ってお金の収支なので、以下のように考えます。

売上 → 売上による収入(売上代金の回収)
仕入 → 原材料・商品の仕入による支払い(仕入代金の支払い)
経費 → 経費の支払い

「お金の出入り」で考えるので、売上を計上しても代金が未回収であれば、営業キャッシュ・フローにはプラスになりません。反対に前金をいただいていれば、営業キャッシュ・フローにはプラスにはたらきます。

仕入や経費も同様で、代金を前払しているものは営業キャッシュ・フローにはマイナスにはたらきますが、未払であれば営業キャッシュ・フローにはプラスにはたらきます。

 

営業キャッシュ・フローを改善するには

営業キャッシュ・フローを改善するためには、まず以下の4つに因数分解していくとよいと思われます。

 

売上を上げる

売上が増えれば、会社の利益にプラスになりますし、それはキャッシュ・フローにおいても同様です(販売先から予定通りに売上代金の回収ができることが前提です)。

 

変動費を下げる

「仕入と経費」を「変動費と固定費」としていますが、考え方は一緒です。どちらも損益計算書上の費用項目であり、キャッシュ・フロー上は支出項目です。

変動費は通常、売上の増減に連動して増減するものですが、売上に対する変動費の割合(=変動費率)を下げることができれば、利益にも営業キャッシュ・フローにもプラスになります。

 

固定費を下げる

固定費は売上の増減に関係なく一定額発生する費用ですが、削減すればその分だけ利益も営業キャッシュ・フローもプラスになります。

 

運転資金を減らす

運転資金は、一般に

 

売上債権残高 + 棚卸資産残高 - 仕入債務残高

 

で表されます。

売上債権を「売上済だけど、まだ代金を回収していない残高」
棚卸資産を「販売していないので現金化されていない資産」
仕入債務を「仕入済だけど、まだ代金支払をしていない残高」

と考えれば、キャッシュ・フロー上は運転資金を減らす必要があるといえます。

 

 

上記4点がキャッシュ・フローに与える影響には大小ありえますが、いずれか一つでも実行できればキャッシュ・フローにはプラスにはたらきます。

まずはこの中から実行可能性のあるものを特定して、さらにそれを因数分解して具体的な行動計画につなげていくとよいでしょう。

 

売上を上げる

変動費を下げる

固定費を下げる

運転資金を減らす